私は幼い頃、絵本の読み聞かせをしてもらった記憶がありません。
でも、本を読むことは好きでした。
気づけば、本のページをめくる時間が心を落ち着かせてくれる大切な時間になっていました。
そして、25歳くらいの頃に思ったんです。「自分に子どもができたら、たくさん絵本を読んであげよう」と。
ところが、いざ子どもが生まれると、「言葉がわかるようになったら読むものだ」と思い込んでいました。
でも、それは違いました。
絵本は、言葉を理解する前から、心で感じるものなんです。
まだ話せなくても、じっと絵を見つめたり、ページをめくる手を伸ばしたり、時には声を上げたりする。そんな姿を見て、「絵本は読むものではなく、一緒に感じるものなんだ」と気づきました。
大人になった今、私は絵本を読む側になりました。
子どもたちの前で声に出して読むたびに、かつて自分が感じたワクワクや安心感がよみがえります。目を輝かせる子どもたちの姿を見ると、「絵本には魔法がある」と改めて思います。
絵本は、ただの物語ではありません。
それは、親子の時間をつなぐ架け橋であり、言葉にできない想いを伝える手段でもあります。
そして何よりも、子どもの心に「大丈夫だよ」と優しく語りかけてくれる存在。
ある日、私の読み聞かせに参加したお母さんが、こんなことを話してくれました。
「この子、普段はじっと座っていられないんです。でも、ここでは最後までお話を聞いていました。絵本ってすごいですね。」
そう、絵本には心を惹きつける力があります。
たとえまだ言葉を話せなくても、子どもは感じ取っています。ページの中に広がる世界の美しさや、物語に込められた優しさを。
私は絵本の読み聞かせをしてもらったことはないけれど、それでも絵本が大好きでした。
そして今は、その魅力を誰かに届けられることが嬉しい。
ページをめくるたびに、誰かの心にあたたかな灯がともることを願いながら、今日もまた絵本を手に取ります。
